研究概要 |
本格的噴火に先立って水蒸気爆発が起こることが多い.このような爆発は,火口直下に存在した熱水溜りが加熱・加圧されて,栓となっていた火口底の堆積物を吹き飛ばしたものであり,直接マグマが関与した噴火とは考えにくい.地下深部でマグマの結晶作用や貫入による減圧で起きた揮発性物質(主にH2O)は脱ガスし,火道を移動し始める.この際,ガスは超臨界流体となっており,その高拡散率と高伝導率のため小さな塊となって火道も上昇し,堆積物と熱交換をおこしながら,等体積状態で移動することができる.地下浅部で気液2相となる場所に達すると,熱水溜りを形成すると期待される.恐らく,流体の上昇に伴って火山性微動が発生しているようと考えられる.熱水溜りへの超臨界流体の流入が高い率で続くことにより,熱水溜りの圧力が増加し,ついには爆発をおこすと考えられる.雲仙普賢岳や雌阿寒岳の噴火では,噴火直前にそのような熱水溜りの圧力が増加し,熱的にも火口周辺の温度が上昇したことが直接あるいは間接的に観測されている.一方,九重火山ではひとたび起きた爆発の後,そのような熱水溜りが収縮を続けている状態が観測され続けている.火口直下に熱水溜りが形成されていても一旦噴火が開始すれば,溜りは減圧されて気相のみとなり,地下から上昇してきた流体が,熱水溜りをそのまま突き抜けて吹きだす可能性が考えられる.普賢岳の噴火の初期や九重山の噴火の初期に噴出物に見られたマグマ物質はそのような流体が運んできたものと考えられる.このような噴出物の変化や火口の状況変化を時間追跡することによってマグマヘッドの上昇を知ることが可能であろう。
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