研究概要 |
電子波の位相干渉に関して超伝導の位相との関わりは重要である。超伝導・常伝導・超伝導接合における常伝導部分のコンダクタンスの揺らぎを考える。両側の超伝導部分の位相はアンドレエフ反射によって常伝導部分の電子位相干渉に影響を与えることが考えられる。そのため通常のUCF(普遍コンダクタンス揺らぎ)と異なる特徴が期待される。両側の超伝導部分の位相をそれぞれφ_L, φ_Rとし,それらの差をφとする。 揺らぎの評価のため久保公式に基づくコンダクタンスの、位相差φを変数とする相関関数δg^2(φ,φ')を計算する。ここでは、2つの超伝導部分の間に電位差を与える2端子コンダクタンスについて計算する。式中のdiffusonとcooperonに多重アンドレエフ反射の効果を取り入れることは既に知られている微分方程式の境界条件の方法により行う。 結果として常伝導部分の形状に依存する位相差の周期関数の表式が得られ、揺らぎδg^2が位相干渉長で決められているという顕著な特徴が明らかになった。実際の測定を考えた場合、2つの超伝導部分の間に電位差を与えるために位相差が変動することを考慮すると、電位差がThoulessエネルギーに比べて十分小さい場合でなければ位相差での平均が観測される。 測定に際してはJosephson電流からの寄与が小さくなければならないが、そのためにはN領域を長くする、あるいは磁場をかけることが必要になる。 この結果では位相干渉長が重要であるが、それはバルクの体系とは異なる。Fukuyama-Abrahamsの理論に従い、理論式の評価の際にCooperonの表式にサイズの効果を反映させて計算する。その結果、有効位相干渉長がバルクの系に比して顕著に長くなることが示された。このことは小さな体系でより顕著である。
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