今年度は2種類の量子ドット構造(単一量子ドット構造と量子ドット配列構造)を作成し各々にマイクロ波を印加した実験を行った。 a)マイクロ波印加用のマイクロストリップラインを有する単一量子ドット構造においてはクーロン障壁振動のマイクロ波変調信号の周波数依存性を調べた。印加周波数範囲は1GHzから10GHzであるがこの周波数範囲ではマイクロ波の印加効果は古典的なものであり振幅電場がドット形成のためゲートに印加している負の電圧に重畳されゲート電圧の変調として現われている。このような解釈で各クーロン振動ピークの分離が説明できた。にもかかわらずクーロン振動変調に周波数依存性が観測された。これはドットを含めたマイクロ波回路のインピーダンスが発振周波数に対し共鳴的に変化することにより理解できた。これは単一量子ドット構造設計ならびに応用に関して重要な示唆を与えるものと考えられる。 b)量子ドット構造を数千万以上規則的に並べた量子ドット配列構造の遠赤外磁気光吸収測定にはエッジプラズモン的に振る舞うモードがある事は知られている。このモードの吸収ピークのピーク位置ならびに吸収線形が量子ホール効果状態にあるエッジ電子のフィリングファクターを反映し振動的に振る舞うことを実験的に観測できた。Heitmann等は遠赤外フーリエ分光法により吸収ピークのエネルギー位置を一定磁場下で調べ磁場に対し振動していることを報告している。我々は遠赤外レーザーを用いて一定波長下で吸収ピークを観測しその磁場変化をもとめ振動を観測した。この方式はSN比もよく時間分解測定も可能なためエッジ状態にある電子間の相互作用理解に対しより多くの有益な知見を与えるものと期待できる。現にパルスバンドギャップ光励起後の吸収の時間変化信号において大きなピークシフトを観測しているがこれも電子電子相互作用の変化に伴うものと思われ量子ホール効果の理解に寄与を与えるものと思われる。
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