研究概要 |
金属ポルフィリン類の光化学挙動は多方面から注目され多くの報告がなされているが、そのほとんどはMg,Zn,Fe,Mn等の2価、3価低原子価金属ポルフィリンによるエネルギー移動、電子移動反応に関するもので、基質の物質変換を誘起する例は数少ない。一方、4価、5価等の高原子価金属を中心金属とするポルフィリン類の光化学挙動は等閑視されてきたと言っても過言ではない。高原子価金属の導入により大幅な酸化還元電位のシフトが可能であり新規な物質変換系の開発が可能と考えられる。演者等はアンチモンを中心金属とするポルフィリン錯体(Sb(V)TPP)は、可視光照射により水を電子源と共に酸素源とするオレフィン類のエポキシ化反応を誘起する事を見出した。水分子からの2電子変換による人工光合成型物質変換反応として大変興味深い。水分子はSb(V)TPPに軸配位後、錯体励起状態での電子移動酸化により金属オキソ錯体酸素として活性化されるので光化学的P-450モデル反応とも言える。 Sb(V)TPPを増感剤、メチルビオロゲンまたは塩化白金酸を電子受容体としアセトニトリル水溶液中オレフィン類の存在下、可視光照射すると電子受容体の還元体と共にエポキシ化合物などオレフィンの酸素化生成物が得られる。H_2^<18>Oを用いた実験からエポキシ化合物中の酸素は水分子の酸素に由来する事が明らかとなった。反応機構の検討から1)励起ポルフィリンの軸配位子未解離体から電子受容体への電子移動による生ずるポルフィリンカチオンラジカルを経由するオレフィンの酸素化反応と、2)ポルフィリン軸配位子解離体からの電子移動により生ずるポルフィリンオキソ錯体を経由するP-450型酸素化反応が進行することが明らかとなった。
|