研究概要 |
本研究は,微小管機能を制御する超分子形成について,チューブリン・阻害剤複合体の構造を解析して微小管機能を解明すること,作用機作に基づいた分子設計により新規生理活性物質の創製を図ることを目的としている. 本年度は,稲病害“稲こうじ"より、リゾキシン/メイタンシン部位リガンドであるウスチロキシンAの類縁体で,最単純構造のウスチロキシンFを新規代謝物として発見・構造決定し、強いチューブリン重合阻害活性を示すことを見出した. 新規コルヒチン部位リガンドと報告されているキュラシンAの全合成を完了し、合成法を確立した,その過程で,メチルシクロプロパンカルボン酸のキラル合成の有用な方法を考案した.また,側鎖部分を変換した類縁体を合成し,構造・活性相関を検討中である. 海綿から得たアレナスタチンAは,強い微小管蛋白重合阻害活性を示した(IC_<50>;2.8μM).これのチューブリンへの結合はコルヒチンとは全く競合せず,ビンプラスチンで阻害されるがその程度は弱い.リゾキシンにより拮抗的に阻害される.16員環上のイソブチル基および側鎖上のエポキシ基,メチル基の立体配置異性体は,いずれも抗チューブリン活性を示さない.また,環上のエステル結合の一つをアミド結合に変換したトリアミド体は活性を示すが,テトラアミド体は活性が無いことを明らかにした.この結果は,KB細胞に対する活性と並行している. 日本産イチイから単離された5個の新規タキサン化合物に,タキソ-ルと同様な,Ca^<2+>による微小管脱重合を阻害する活性が認められた.これらが,タキソ-ルの抗腫瘍作用に重要とされているオキセタン環やアシル側鎖を有しないことは興味深い.
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