ロイシンジッパー型タンパク質(b-ZIP)は二量体を形成してDNAと塩基配列特異的に結合し、その二量体形成部位はロイシンが繰り返し存在するロイシンジッパーであり、DNA結合部位は塩基性アミノ酸が数多く存在するベーシック・リ-ジョンである。ベーシック・リ-ジョンとロイシンジッパーは連続したα-ヘリックス中に存在するため、ロイシンジッパーの構造変化は分子内で伝播してベーシック・リ-ジョンの構造に影響を与えると考えられる。ロイシンジッパー部分が安定なヘリックスを形成することにより、そのN末端側にあるベーシック・リ-ジョンはヘリックス構造を形成しやすくなっていることが考えられる。ロイシンジッパー部分の二量体形成にともなう構造変化がb-ZIPのDNA結合能および塩基配列選択性に与える影響を検討するために、(1)天然型GCN4ペプチド(56アミノ酸)、(2)二量体形成をコイルド・コイルではなく構造変化を伴わないホストーゲスト複合体によって形成したGCN4ベーシックリージョンペプチド、そして(3)コイルドコイルで二量体形成するが、ロイシンジッパー部位の構造変化がベーシックリージョンに伝播しないと考えられる、ロイシンジッパー部位とベーシックリージョンをジスルフィド結合でつないだペプチドについて、DNAとの結合を調べた。これらの結果からDNA結合部位の構造は、コイルドコイル構造によって安定化されており、ベーシックリージョンの構造が変化しやすいほど、そのDNA認識能が鋭敏さを増していることがわかった。
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