研究概要 |
我々は、ガングリオシドおよびシアル酸含有糖脂質とリポソームからなる細胞表層モデル系を用い、糖鎖のリポソーム表面からの距離、配列状態および密度などを考慮したリポソームを調製し、実細胞との相互作用を通じて細胞表層での糖鎖の認識機構について検討してきた。シアル酸の数の異なる種々のガングリオシド脂質をリポソームに組み込み、免疫細胞特にT細胞との相互作用を調べた。細胞との相互作用は、共焦点レーザー蛍光顕微鏡により、個々の細胞内カルシウム濃度の増加を追跡することにより評価した。その結果、ある種のポリシアロガングリオシド(PG)含有リポソームが、T細胞を強く刺激することを見いだした。糖鎖分子構造のモデル解析から、T細胞刺激能の高いガングリオシド(GT1b,GD1a)では、末端のモノシアル酸残基が、リポソーム表面に突き出して、効率よくレセプターと相互作用しえる構造をとっていることが示唆された。そこで、ガングリオシドのモノシアル酸残基の機能に注目したモデル脂質として、スペーサー長の異なる2種の人工モノシアロ脂質sialylcholesterol (SC2、SC6)を合成し、その含有リポソームのT細胞刺激能を調べた。その結果、2種類のsialylcholesterol含有リポソームは共にT細胞を強く刺激した。特にSC6含有リポソームにおいては天然のガングリオシド含有リポソームをも凌ぐ強いT細胞刺激能を示した。細胞刺激には、シアル酸残基のリポソーム表面での存在状態がとくに重要であることがわかった。 さらにこのsialylcholesterol含有リポソームによるT細胞の増殖活性について、^3Hラベルしたthymidineを用いて調べたところ高い増殖活性をもっていることも明らかとなった。
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