研究概要 |
「高輝度発光材料」を創製する目的から、これまで「希土類イオン」を付活した酸化物の結晶構造の次元性と高濃度付活における発光特性などとの関係について検討してきた。その結果、希土類イオンの高濃度付活による濃度消光を抑制するには、エネルギー伝達の遮蔽効果が必要であることを知見した。 "嵩高い"希土類錯体は、エネルギー的に有効な遮蔽効果をもつことを期待し、粘土鉱物の一つ"スメクタイト"に高い分極能をもつo-フェナイトロリンを配位子とした希土類錯体の吸着条件を検討し、錯体濃度に依存した配列状態や発光特性などについて調べ、配列状態の変化より、二次元層空間に閉じ込められた同種、あるいは異種希土類錯体間のエネルギー移動を新たに知見した。 モンモリロナイト層間へのインターカレーション反応により作製したMT-Eu, Tb (phen)^<3+>_2複合体の基本面間隔は、約18Åとなり、層間においてEu (phen)^<3+>_2とTb (phen)^<3+>_2の異種錯体が二分子層を形成し、互いに近接した立体配置をとることが判明した。Eu (phen)^<3+>_2吸着量に対するMT-Eu (phen)^<3+>_2およびMT-Eu, Tb (phen)^<3+>_2複合体におけるEu^<3+>の発光強度変化を比較した結果、同じEu (phen)^<3+>_2の吸着量においてMT-Eu, Tb (phen)^<3+>_2の発光強度が著しく増大し、吸着量に対する発光強度増加率も増大した。 これらの結果より、二次元空間においてTb (phen)^<3+>_2とEu (phen)^<3+>_2は、均一な溶媒や結晶構造中よりも近接した立体配置をとり、これがEu (phen)^<3+>_2に対するTb (phen)^<3+>_2の光増感作用を誘起することが明らかとなった。
|