希土類マンガナイト相の安定性と錯体からの合成プロセスの開発

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08220233
• 研究機関: 豊橋技術科学大学
• 研究代表者: 亀頭 直樹 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (20023153)
• キーワード: 希土類マンガナイト / 酸素八面体 / 錯体法

研究概要

本研究の目的は、先ず通常のセラミックス法により合成した希土類マンガナイト系酸化物のいくつかの相の熱力学的データ、結晶構造についての測定を行ない相の安定性を調べること、次に成分元素を含む2-エチルヘキサン酸錯体を合成しなるべく低温での単一相の合成をめざすとともに(相転移の存在のため)、可能な限り固相反応法では不可能な相の合成もねらうことである。これらの目的に沿ってLaMnO_3の斜方晶と菱面体晶との両方の相を得て、特にX線的に完全な菱面体晶の相を合成しその構造解析もした。さらにパイロクロア関連の構造を有する相について、熱重量法にて各相の安定性をしらべ、いくつかの熱力学的データを得た。さらに単一相のものについてその結晶構造が3種類あることまでつきとめた。上記各物質はすべてMnを囲む酸素八面体の配列の仕方により種々の構造をとるものであり、さらに高次構造の物質の合成への手がかりを得た。またLaMnO_3の菱面体晶の相やLnMn_2O_5(Ln=希土類)などの固相反応法ではきれいに合成できない試料を、2-エーテルヘキサン酸錯体を用いる方法で合成できたことは本研究の属する重点領域の課題に沿う重要なデータを得ることができたものである。これによりこれらの物質の新しい諸物性値を測定できた。なかでもK_2NiF_4型構造を有する(SrLa)_2MnO_4の系でAサイトに欠陥を有する相で斜方晶の相が出現することをこの錯体法で始めて単離し確認したことは今後の新物質・新相の開発への大きな突破口となったと確信している。これら上記の諸成果をいくつかの論文にまとめて現在投稿しつつあり、この中受理されたものについて次頁に記載してある。

研究成果

• [文献書誌] T.Atsumi and N.Kamegashira: "Decomposition Oxygen Partial Pressures of Ln_<1-x>Sr_xMnO_3(Ln=La,Nd,and Dy)" J.Alloys and Compounds,. (in press).
• [文献書誌] H.Satoh,M.Kamegashira: "Crystal Structure Refinement of Tetragonal BaTb_2Mn_2O_7" J.Alloys and Compounds. 244. 75-78 (1996)
• [文献書誌] S.Ueno and N.Kamegashira: "Crystal and X-ray Powder Diffraction Data for Orthorhombic BaNd_2Mn_2O_7 Phase" Powder Diffraction. (in press).
• [文献書誌] T.Atsumi,T.Ohgushi,H.Namikata,N.Kamegashira: "Oxygen Nonstoichiometry of LnMnO_<3-δ>(Ln=La,Pr,Nd,Sm and Y)" J.Alloys and Compounds. (in press).
• [文献書誌] A.Atsumi and N.Kamegashira: "Decomposition Behavior of Ln_2Mn_<4/3>W_<2/3>O_7(Ln=Eu and Er)in reducing Atmosphere Thermodynamic Properties" J.Mater.Res.(in press).
• [文献書誌] H.Satoh,N.Kamegashira et al.: "Heat Capacities of LnCrO_3(Ln=rare earth)" J.Alloys and Compounds. (in press).