研究概要 |
本研究では各種希土類金属の(イミノアシル)錯体の合成法を開発し、さらにその反応性を系統的に研究し、希土類錯体としての特徴を探ることを目的として研究を行なった。まず、各種の無水ランタニド塩と2,6-キシリルイソシアニドのテトラヒドロフラン白色懸濁液に-78℃でブチルリチウムを加え、30分間撹拌後加水分解処理をして対応するアミドイミンを得た。その結果、CeCl_3を用いた場合にイソシアニドの挿入反応が定量的に進行し、アルドイミンが99%の収率で生成することがわかった。LaCl_3やSmX_3等の場合、多重挿入反応生成物が相当量生成した。CeCl_3のない条件でのブチルリチウムとイソシアニドの反応では、イソシアニドの三量化が進行することから、上記の結果は、まずCeCl_3とブチルリチウムとの金属交換反応によりブチルセリウムが発生し、次に炭素-セリウム結合間にイソシアニドが挿入して(イミノアシル)セリウムが生成していることを示唆していると考えられる。次に上記の方法でアルキルリチウム、イソシアニド、CeCl_3から調製した(イミノアシル)セリウムに、カルボニル化合物を作用させてα-ヒドロキシイミンを合成した。アルキルハライドとSmI_2を用いる方法では導入が困難であったフェニル基やビニル基も効率よくカップリングさせることができた。また、アルキルリチウムにかえてジアルキルマグネシウムを用いた場合も同様に金属交換がすみやかに起こり、(イミノアシル)セリウムが生成した。興味深いことに、マグネシウム上の両方のアルキル基が(イミノアシル)セリウムに導入された。こうして調製した(イミノアシル)セリウムは、カルボニル化合物に付加し、対応するα-ヒドロキシイミンを収率よく与えた。
|