本研究では、糖類の有効利用の観点から、希土類金属イオンを触媒とする糖類の有用な化学物質への化学的変換反応について研究を行なった。本研究の成果として(1)単糖類からフルフラール誘導体への化学変換反応、ならびに(2)二糖類の加水分解反応が、それぞれランタノイド(III)イオンおよびセリウム(IV)イオンにより触媒的に進行することを見出した。 (1)希土類金属イオンによる単糖類からフルフラール誘導体への変換触媒反応 すべてのランタノイド(III)イオンがグルコースをはじめとする単糖類から抗生物質合成の原料となる高価な5-ヒドロキシメチルフルフラールへの変化反応を触媒することを見出した。同反応において、触媒活性と希土類イオンの種類との相関を検討したところ、イオン半径の増大とともに活性が増大するが、Sm^<3+>で極小とするがふたたびEr^<3+>で最大となってLu^<3+>で減少する、double-arc型の傾向を示すことが明らかとなった。 (2)セリウム(IV)イオンによる二糖類の加水分解反応 希土類金属イオンのうち、IV価のセリウムイオン(Ce^<IV>(NH_4)_2(NO_3)_6)により二糖類の加水分解反応が著しく加速されることを見出した(pH7.0、40℃-100℃)。この加水分解反応は触媒であり(ターンオーバー80)、反応速度は基質濃度に対して一次速度式に従った。加水分解反応はセリウム(IV)錯体に特異的であり、同様な錯体であるCe^<III>(NH_4)_2)(NO_3)_5には加水分解活性は見られなかった。各二糖類で反応速度を検討したところ、スクロース》マルトース>ラクトース>セロビオースの順に反応は効率よく進行した。特に、スクロース加水分解のアレニウスプロットから活性化エネルギーは14.4kcal mol^<-1>と求められ、既に報告されている0.18NHCl存在下での活性化エネルギー、30kcal mol^<-1>と比較して高活性であることが明らかとなった。
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