研究概要 |
希土類元素は様々な分野で用いられているが、その生体影響については不明な点が多い。そこで生体成分と希土類元素の相互作用を明らかにすることを目的として、実験動物に投与した希土類元素の血漿中の存在状態を検討しin vitroにおける相互作用と比較した。さらに、肝臓内に取り込まれた希土類元素の存在状態についても検討した。以下の結果を得た。 1.生体成分と希土類元素の相互作用の検討のために、生体試料中の希土類元素の形態別高感度測定を目指し、液体クロマトグラフィーによる分離と、その溶出液のプラズマ質量分析計への直接導入を試み、測定条件を確立した。 2.テルビウム(Tb)またはイッテルビウム(Yb)を1または10mg/kg体重当たり尾静脈内投与したマウス(ICR,♂8w)の血漿中投与元素濃度は、短時間のうちに低下し20時間後にはほぼ消失した。血漿濃度と投与量はYbでは対応したが、Tbでは、投与1時間後までは10mg/kg投与の方が1mg/kg投与より高いが、それ以降は逆転した。また1mg/kg投与では、YbとTbの濃度と経時的変化は殆ど同じであるが、10mg/kg投与ではTb投与の方が濃度が低く、より早く吸収される化学種の存在が示唆された。 3.血漿中の化学種分離を行ったところ、Tb Yb共に3つの異なる形態で存在することが示された。これらは、高分子(推定MW600KD以上)、MW12〜13KDの低分子、およびイオン状態と推定された。元素とその投与量により結合分子種の存在比は異なり、投与15分後にYb1mg/kgではイオンが、10mg/kgでは低分子のピークが優勢であり、Tb1mg/kgでは低分子結合が多いが、10mg/kgでは高分子または不溶性になりやすい形態は増すことが示唆された。 4.7年度に調整した、肝臓可溶性画分(Tb25mg/kg投与20時間後)を同様の手法で分離したところ、投与元素は4つのピークを示し、推定MWはそれぞれ600KD以上、400KD、70KD、数KDであった。後3者はFe、Cu、およびZnの溶出位置と重なることから、これらを含有する金属タンパクとの関連に興味が持たれる。
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