本研究では、まず、様々な構造を持つ新規ユウロピウム-β-ジケトナト(R_1COCHCOR_2)蛍光錯体を合成し、それらの蛍光特性を検討することにより、β-ジケトナト-ユウロピウム錯体の蛍光強度と量子収率に及ぼすR_1とR_2の影響を明らかにした。従来法に用いられていたユウロピウム蛍光ラベル剤の欠点を克服するために、本研究ではβ-ジケトンにクロロスルホニル基を導入することにより、穏やかな条件下でタンパク質を直接標識できる新規ユウロピウム-β-ジケトナト蛍光ラベル剤を合成した。 新規ラベル剤を用いて、ウシ血清アルブミン(BSA)の標識及び標識BSA-ユウロピウム溶液の蛍光特性を検討した。測定結果によって、新規ラベル剤は強い蛍光があると同時に、200μs以上の蛍光寿命を持ち、時間分解蛍光イムノアッセイのラベル剤として用いられることを明らかにした。新規ラベル剤を用いたBSAの時間分解蛍光測定は10^<-15>Mレベルの検出限界が得られ、非常に高い感度を有することを示した。 新規ラベル剤を用いて、ストレプトアビジン(SA)、ウサギ抗ヒトα-フェトプロテイン(AFP)抗体及びメタンフェタミン-BSA結合体を標識し、ヒト血清中のAFPと免疫グロブリンE(IgE)及びヒト尿中のメタンフェタミン(MA)を測定した。新規ラベル剤を用いる時間分解蛍光イムノアッセイによるAFP、IgE及びMAの測定はそれぞれ1.0x10^<-6>ng/ml(AFP)、7.0x10^<-4>IU/ml(IgE)と25pg/assay(MA)の検出限界を示し、従来のラジオイムノアッセイやエンザイムイムノアッセイより、2-5桁の高い感度を有することを明らかにした。
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