研究概要 |
六員環複素環化合物の合成法として有用なエナミドおよびチオエナミドの光環化反応が結晶中でもおこることは平成6,7年度の研究で明らかにしたが、今年度はその反応例を増やすとともにこれらの化合物の結晶構造をX線構造解析によって決定し、結晶構造と光反応性との関係を明らかにした。7年度の研究で示唆された結晶中におけるreaction cavityの重要性が一層明らかになった。すなをち結晶中の光反応で反応物から生成物への変化にともなっておこる分子の形の変化を許容する空間的な余裕が有るかいなかが結晶中光反応がおこるかおこらないかを決定する最も重要な因子である。ベンゼン環をもつエナミドやチオエナミドにおいてパラ位に置換基を導入しても結晶中光反応の反応性は低下しないが、オルト位やメタ位に置換基を導入すると反応性が低下するという事実もこのreaction cavityという概念により合理的に説明できる。 この他エナミドと同じ含窒素カルボニル化合物であるイミドの結晶中光反応についても検討した。多くの環状イミドが溶液中と同様に結晶状態においても光反応をおこすことが明らかになった。特にノルボルナン環を持つ環状イミドの結晶中光反応においては溶液中の反応とは著しく異なった立体選択性を示すことが明らかになった。
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