研究概要 |
1.三元系ウラン化合物UCu_2Snの単結晶育成とスーパーゾーンギャップ 高畠等は以前、UCu_2Sn多結晶を用いた研究によって、反強磁性転移に伴って電気抵抗が30%も上昇することを明らかにした。今回、その原因を解明する為に、タングステンるつぼに封入したブリッヂマン法によって単結晶を育成し、電気抵抗、帯磁率、ホール係数を測定した。 この化合物は六方晶GdPt_2Sn型の層状構造を持つにも拘わらず、常磁性状態の電気抵抗と帯磁率の異方性は弱い。ホール係数の解析からは、組成式当たり0.14個の電子的キャリアーを持つことが判った。15KのT_N以下でb軸方向の電気抵抗は上昇し続け4.2Kで2倍になるのに対して、a軸とc軸方向では上昇するものの12K以下で飽和する。この結果は、磁気的なスーパーゾーンギャップがb軸方向に最も大きく開くことを示唆す。この点をさらに追求し、磁気構造を決める為に、日本原子力研究所の長壁と共同で中性子回折実験を行ったが、4.2Kでも磁気散乱ピークは観測されなかった。広大総合科の小島はT_N以下でもCuとSnのサイトに内部磁場が発生しない事をNMRによって見出した。 2.三元系ウラン化合物の探索 UT_2とUTSn_2(T=遷移金属)系の物質探索の結果、新しい化合物としてUPt_2Ge,UPdSn_2,U_2Pd_6Sn_5を発見した。これらの試料は、電子プローブミクロ分析によって単相である事を確認したが、結晶構造の同定には至っていない。UPdSn_2は約30Kで反強磁性転移を起こすが、他の2化合物は4.2Kまで磁気転移を起こさない。
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