重い電子系超伝導体UPd_2Al_3の示す磁性及び超伝導について調べるために、^<27>Al、^<105>PdのNMR/NQRを行い、スペクトル及び核スピン格子緩和時間(T_1)測定から以下の結果を得た。 UPd_2Al_3では、0.85μ_Bの大きさの磁気モーメントを持つ反強磁性磁気秩序が14K (T_N)以下で発生している。この物質において、Pd原子はU-Pd面内に存在し、またAl原子は反強磁性的に配列したU-Pd層の中間に存在している。観測されたNQRスペクトルは、結晶構造の対称性を反映し、^<105>Pd核のみ結晶C軸に対して垂直な方向に約3KOeの内部磁場を受けていることを示す。得られた内部磁場は非常に小さい値であり、このことからPdが非磁性であり、Pd-4d電子の分極が非常に小さいことが分かる。UPd_2Al_3の持つ重い電子系としての性質は、Uの5f電子のみに起因する。^<105>Pd核において、Uモーメントとの磁気的な結合は緩和現象も支配し、1/T_1の温度依存性は常磁性状態で温度変化せず、さらにT_N近傍で臨界発散が起こる。以上の1/T_1の振る舞いは、Uの磁気モーメントが単に0.85μ_Bと大きいだけでなく、局在した性格を持つことを示している。他方、反強磁性秩序状態において内部磁場を受けない^<27>Al核では、1/T_1の温度依存性は^<105>Pdとは異なり、常磁性状態で1/T_1はTに比例したFermi液体的な振る舞いを示し、1/T_1は伝導電子系からの寄与のみに支配されている。超伝導状態における、^<105>Pd及び^<27>Alの1/T_1は共に、超伝導転移温度(T_c)でコヒーレンスピークを持たず、低温でT^3に比例した温度変化を示す。この結果は、UPd_2Al_3の超伝導エネルギーギャップが線状のノードを持つ大きな異方性をもつためと解釈される。T_cで規格化すると、両方の核の緩和はまったく同じ温度変化をし、低温で形成された単一バンド全体が超伝導状態になっていることを示している。以上の結果は現在UPd_2Al_3における比熱測定から得られている点でギャップ零が存在する(C∝T^3)結果とは矛盾している。現在両者の矛盾点を埋めるべく詳細な研究を行っている。
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