半導体発光素子を用いると、注入する電流の揺らぎを小さくすることにより、非古典光(サブポアソン光)を比較的容易に発生することができる。非線形光学効果による非古典光の発生に比べると、実験装置が簡便である、エネルギー効率が良い、デバイスの構造や電子系を変化させることによるシステムの制御性が良い等の利点がある。 本研究では、高速発光ダイオードを用いて微弱強度領域でのサブポアソン光の発生を行った。微弱強度領域で広い周波数帯域にわたってスクイージングを観測するには、増幅器の特性が良いことが重要なので、低雑音増幅器の自作を行った。室温に於いて実験を行ったところ、スクイージングの起こる周波数に電流強度依存性があることを見い出した。注入電流の値が1mA以上では、スクイージングの帯域幅は一定であるが、それ以下では、電流値の減少とともに小さくなった。この結果は、明確にコレクティブ・クーロンブロッケイド効果の存在を示している。コレクティブ・クーロンブロッケイド効果は、規則的に注入された電子が、発光領域にトンネリングする際に生じるランダム性が、電子の集団的な効果により押さえられる現象である。本研究により、サブポアソン光の発生の理論的な記述に関して、電子や光子を粒と考えその一つの粒の統計的な振る舞いを考慮すればよいというナイーブな描像が不十分であることがわかった。また、時間幅が短く、かつ、微弱なサプポアソン光を発生するためには、素子構造の見直しの必要性が明らかになった。
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