エクセルギーの観点から資源として豊富な飽和炭化水素を有効に利用するためには部分酸化によりアルコールやアルデヒドを生成することがひとつの方法である。本研究では触媒反応によりメタンを部分酸化するために有効な不均一触媒のキャラクタリゼーションを行い、更に効率の高い触媒を開発するための資とすることを目的とした。 メタンの部分酸化反応のための触媒としてはシリカに担持したモリブデン酸化物が有望とされていたが、通常の触媒調製法である含浸法により調製したものはそれほど活性が高くない。一方、ゾルゲル法により調製されたものは同じ組成でも転化率、選択性に優れ、収率は4%近くなる。この両者の違いを構造化学の観点から明らかにするために、EXAFS、ラマン散乱、赤外線吸収、可視紫外吸収など各種の分光法およびX線回折を使用して研究を行った。その結果、含浸法により調製したものは三酸化モリブデンの超微粒子(サイズは担持量に依存)がシリカ表面に生成しているのに対し、ゾルゲル法によるものはケイ酸エチルのゲル化にともないモリブデン原子がシリカのネットワークの中に原子単位で取り込まれることがはっきりした。触媒としてはこれを熱処理してから使用する。この熱処理による構造変化については未だ分明でないが、おそれく高分散を維持しているものと思われる。また、含浸法によるものは触媒構造が担持量に依存するのに対し、ゾルゲル法によるものは構造に担持量依存性がなく、均質であることも判明した。こうした構造の違いが触媒活性の差違をもたらしているものと結論される。
|