前年までの研究で、分子結晶SnI_4は超高圧力下60GPaまでに結晶I-結晶II-アモルファス-結晶IIIの構造相転移を示すことを見出していた。今年度はさらに放射光X線回析実験を進め、分子解離相と考えられる第III結晶相の挙動を153GPaまで調べる一方、3種の異なるアモルファス状態が存在することを明らかにした。分子性結晶Iは約7GPaで第II結晶相に相転移する。過去の電気抵抗測定結果と比較して、この相転移が絶縁体-金属相転移であることが判明した。第III結晶相は60GPa以上、少なくとも153GPaの圧力まで安定に存在し、その圧縮曲線が分子解離後の面心立方構造をもつ純粋なよう素のそれに一致することを見出した。この結果と回析パターンの考察から、可能な3つの構造モデルを提唱し、今後の実験の指針を与えた。一方、圧力を下げていく過程で再びアモルファス状態が現われるが、このアモルファス状態の中で不連続な相転移があることが前年の研究で分かっていた。このアモルファス状態を再び圧縮する結晶相の相転移が起きる圧力で、アモルファス回析パターンにハロ-位置の飛びや半値幅に異常がみられた。これは結晶構造の相転移を強く反映した、アモルファス内の相転移と考えられる。これらの結果は圧力誘起アモルファス化現象の統一的な解釈に向けて重要な知見となると同時に、分子結晶の原子結晶化・金属化過程の普遍性に新たな検証を加えるものである。 以上の研究成果は、平成8年8月の国際結晶連合国際会議での招待講演、9月秋の物理学会での1講演、11月の高圧討論会での3講演として発表した。現在、雑誌投稿論文2編を準備中である。
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