イオン性高分子は、電荷を帯びた大きな高分子と小さなカウンターイオンの複合体であり、電気的中性の原理からこの両者は別個に振る舞うことはできない。水溶液中においては、カウンターイオンは高分子から解離するが、強い静電的相互作用のため高分子の回りでカウンターイオン雰囲気を形成する。この様な条件下で動的光散乱測定を行い、系内の運動モードを調査したところ、数千Å程度の大きさに対応する遅いモードと数十Åに対応する速いモードが検出された。遅いモードは高分子イオン間の静電的相互作用により形成された多くの高分子の会合体すなわちクラスターの運動モードと考えられる。速いモードは単一の高分子の運動モードと考えられるが、数百Åと考えられる高分子一個の大きさから考えて、検出されたモードは速すぎる。これは高分子イオンが単独で運動出来ず、小さく速く動けるカウンターイオンと一種の協同運動をしているいためと考え、大きさすなわち運動性の異なるカウンターイオン種を用いて同一の高分子イオンの運動モードを調査した。その結果、小さく速く運動しうるカウンターイオンと組み合わされた高分子イオンが速く運動する傾向が観察された。
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