研究概要 |
本研究では、ベロブスカイト構造をもつマンガン酸化物(Bi, A)MnO_3(A=Ca, Sr, Ba)固溶体を合成し、その構造および物性を詳細に調べることにより、金属化とともに強磁性を発現する(La, A) MnO_3系と比較対照することを目的としている。 まずBi_<1-x>Ca_xMnO_3系は、0.8≦x≦1.0の組成範囲で強磁性を示すことを明らかにした。反強磁性体CaMnO_3のCaをBiで置換することにより、電気抵抗は減少するが、金属化には至らない。磁気モーメントはx=0.875で最大値1.1μ_Bを示すが、さらにBi置換量を増やすと減少し、x=0.8で強磁性は消失した。これは電荷秩序配列の傾向が強まって、二重交換相互作用による強磁性発現が抑制されたためと解釈される。なおこの系では、0.875≦xの領域で大きな負の磁気抵抗効果を観測した。 次にペロブスカイト型BiMnO_3を高圧合成により作成し、飽和磁気モーメント3.6μ_Bキュリー温度105Kの強磁性体であることを確認した。この強磁性の原因を明らかにする目的で、BiをSrにより部分置換した固溶体試料を作成したが、Sr置換量の増大に伴い、強磁性が急速に消失することを観測した。またSr置換により電気抵抗は減少するが、金属化には至らない。これらの実験結果はBiMnO_3の強磁性の原因を(La, Sr) MnO_3系の場合と同様な二重交換相互作用によって説明することができないことを示している。現在単結晶を育成し、結晶構造の精密解析を行っており、その強磁性の起源が明らかになることを期待している。
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