研究概要 |
d波超伝導体の(1,1,0)面にける対称性の異る超伝導の共存に関して、準古典近似の範囲においてこれまで研究を行って来た。さらに本研究ではより一般的な面の向きに対してこの問題を調べた。その成果は以下の通りである。 (1)d_<x^2-y^2>波とd_<xy>波が共存する場合 面の向きが(1,1,0)面からずれて一般的な向きになった場合、空間的な対称性はより悪くなる。この対称性の低下が原因となりd_<x^2-y^2>波以外の対称性を持つ超伝導を誘導することとなる。これはグリーン関数の非対角項がd_<x^2-y^2>対称性以外の成分を含んでしまうことによる。これは(1,1,0)面の場合と大きく異る点である。d_<x^2-y^2>はどちらもd対称性を持っているため、表面においてはオーダーパラメータの相対的な位相を同じにして線形結合をつくり、表面に対して壊されにくいd対称性を形成する。一方バルクにおいては位相差は±π/2を好み時間反転対称性を破る。d_<xy>波を生じさせる相互作用を引力ではなく斥力にした場合であっても、面の向きによる対称性の低下によりd_<xy>波超伝導は表面において出現することもわかった。このときの位相差はπとなり、時間反転対称性は破らない。時間反転対称性が破れている状態の場合には、状態密度はギャップが開いた形になり、表面電流も誘起される。 (2)d_<x^2-y^2>とs波の共存 s波はd_<xy>波とは異りd対称性成分を持たない。このため表面においても±π/2の位相差を好むことがわかった。その他の特徴はd_<xy>波の場合と同様である。
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