現在、PrBa2Cu3O7(Pr123)酸化物の超伝導消失の機構解明については、Pr4fバンドとコンダクションバンドの混成が原因ではないかと考えられている。すなわちPrとCuO2面の局所構造の研究が重要である。本研究の対象であったPrBa2Cu4O8(Pr124)はPr123と結晶構造が類似していることから両者を系統的に比較検討することができるする。 本研究結果よりPr124は6気圧純酸素中で960℃近辺の極狭い領域でしか合成できないことがわかった。これはそれより高温ではPr247相及びPr123が安定になり、低温では十分な拡散が得られないためである。さらに酸素圧を上昇させると、Pr+4価のPrBaO3酸化物が安定になり合成ができなくなるためである。 今回合成したPr124は高温(170K以上)では半導体的挙動を示し170K以下において極大を示しそれ以下では金属的伝導を示す。すなわち低温領域においては1次元CuO鎖によると思われる1次元伝導機構が働いていると予想される。これは熱伝能の測定でもそれを示唆する結果が得られた。 高圧をかけると2GPaまでは半導体的挙動を示している領域では比抵抗が上昇していくのに対し、金属的領域ではほとんど変化は見られなかった。しかしそれ以上の圧力では極大は300K以下では観察されず全温度領域で金属的になりその比抵抗も上昇していった。また現在8GPaまでの圧力では超伝導あるいは絶縁体等の相転移は観測されなかった。
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