細胞壁を持たない好酸好熱性の古細菌サーモプラズマの細胞構造及び、巨大細胞構造に微分干渉顕微鏡及び、蛍光顕微鏡を用いて観察検討した。サーモプラズマの新たに単離した菌株によって菌体の形状が異なり、HO-51株では球形であるのに対し、HO-54株及びサーモプラズマの標準株では不定形の菌体の形状が観察された。走査型電子顕微鏡で観察した所、巨大細胞構造の内部に菌体が融合した層状構造が観察された。原始古細菌から、原始真核生物への移行の過程で巨大細胞構造の形成が寄与している可能性を示唆している結果と考えられた。 好酸好熱性の古細菌Sulfolobus ♯のイソプロピルリング酸脱水素酵素の遺伝子をクローニングし、一次構造を決定した結果に基づき、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素とイソクエン酸脱水素酵素の復合号系統樹を作製した。Sulfolobusのイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素と真正細菌のイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素の間に根が付くことが分かった。すなわち全ての生物の共通の祖先から真正細菌と古細菌がまず第一に分岐したという、これまでいくつかの双子の酵素から示されている生物の系統樹を支持する結果であった。 登別の温泉より単離した、超好熱性の古細菌のrRNA遺伝子を染色体DNAよりクローニングしその塩基配列を決定した。その塩基配列を既知のCrenarchaeotaに属する古細菌の遺伝子と比較したところ、この菌は既知の古細菌と明らかに異なった古細菌であった。またこの菌は古細菌の中でも深い位置から分岐しており、全生物の共通の祖先の性質を残した古細菌であることが分かった。この菌の性質をさらに詳しく調べることによって全生物の共通の祖先の性質を知る手がかりが得られるものと予想される。
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