研究課題/領域番号 |
08229244
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研究機関 | 武蔵工業大学 |
研究代表者 |
永井 正幸 武蔵工業大学, 工学部, 教授 (80112481)
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研究分担者 |
西野 忠 武蔵工業大学, 工学部, 教授 (30061485)
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キーワード | コンポジット / イオン導電体 / フッ化銀 / 多孔質アルミナ / 粒子配向 / 結晶子径 / 成長機構 / 電気伝導度 |
研究概要 |
マトリックスとして用いた多孔質アルミナの細孔中で、フッ化銀及びヨウ化ナトリウム水溶液を出会わせて堆積させることにより、ヨウ化銀-アルミナ系コンポジットを作製した。溶解度が非常に小さいヨウ化銀は瞬時に堆積し、その後はヨウ化ナトリウム側へ一方的に成長した。得られた試料に関しては、主として温度及び濃度勾配がコンポジットの組織と形態に与える影響を検討した。検討項目としては、粒子の形態・生成相・配向度・結晶子径などを取りあげた。走査型電子顕微鏡による観察と、コンポジット試料を細かくセクショニングした試料に関するX線回折を行い、空間的な分布に注目して調べた。初期に堆積した部分の粒子は全く粒子配向を示さなかったが、それに引き続いて堆積した部分の粒子は配向成を示した。初期堆積部分のヨウ化銀の(001)と(hh0)方向の結晶子径は、ほぼ一致していることが分った。初期堆積部分から次に堆積した部分へ移行するにつれて、(001)方向の結晶子径が増加し、(hh0)方向の径は減少した。従って、(hh0)方向の結晶子径に対する(001)方向の径の比(アスペクト比)は、堆積の進行とともに次第に増加した。フッ化銀及びヨウ化ナトリウムの両水溶液間につけた温度勾配は、粒子配向とその距離依存性に大きく影響した。ヨウ化ナトリウム水溶液側の温度が増大すればする程、配向度の飽和値は減少した。また、堆積したヨウ化銀の細孔空間の体積に対する比率は、ヨウ化ナトリウム水溶液側の温度が増大するにつれて減少した。ヨウ化銀の溶解度、結晶核生成速度及び結晶成長速度は全て温度に依存するので、配向度やその飽和値は温度に依存する。また、限定された細孔空間中でのヨウ化銀の成長を考慮する必要がある。このように限定された空間で温度と濃度勾配がついているときに、六方晶系のヨウ化銀のc軸方向への選択的な成長が起こるとするモデルを提案した。多孔質アルミナとヨウ化銀は大きな界面をもつので、絶縁体分散型のコンポジットで認められているような電気伝導度の増大効果が、このタイプのコンポジットでも認められたことが推定された。実際に、室温から200℃までの温度範囲で測定した電気伝導度は、同じ水溶液から作製した粒体を成型した試料よりも、室温付近で約2桁程度大きかった。このことは界面の易伝導層の存在を予測させた。しかし、絶縁体分散系コンポジットと異なり、結晶子径が非常に小さいことや配向が顕著であることが本系の特徴である。これらの点を考慮して、電気伝導度の増大の原因やその制御方法を検討して必要がある。
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