無極性分子から構成されるファンデルワ-ス錯体については、実験的検証が非常に困難なため、分子構造を始めとする物理化学的性質はほとんど解明されていない。本研究は無極性分子ファンデルワ-ス錯体の唯一の光学的許容遷移であるファンデルワ-ス振動モードの観測するために以下の実験的および理論的研究を行った。 (1)後進行波管(BWO)を光源とするサブミリ波分光システムの完成と評価 前年度までに製作した周波数標準に位相安定化したサブミリ波光源、分子ジェット発生装置、準光学的共振器型試料セル等を組み合わせ、コンピューターで全体を統括し制御する分光システムを構築した。特に、周辺のソフトウェアを整備することによって、長時間の積算計測に耐えられるような信頼性の高いシステムとした。分光システムの評価に用いる対象としては、H2O・Arクラスターの630及び750GHz帯のファンデルワ-ス振動バンドを用いた。このスペクトルを実測することによって、クラスター生成の最適化と吸収検出法の最適化を行った。 (2)ab-initio計算による(N^2)_2クラスターの振動スペクトルの予想。 従来の量子化学計算では最安定平衡構造すら確定していない状況なので、実験の指針となりうる信頼の高い計算を行うために、Gaussianの基底関数をCC-pVQZレベルにまで拡大したab-initio計算を行った。安定平衡構造とそれらのポテンシャル障壁の計算及び振動数と遷移強度を見積った。 (3)無極性分子クラスターのサブミリ波測定。 先の予想周波数計算に基づいて、(N^2)^2の吸収分光を開始した。
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