研究概要 |
本研究では,有機分子半導体のナノメートルサイズの微結晶および薄膜を作製し、微結晶・薄膜の構造・形態と光学特性の相関を明らかにし、分子の組織化・集合化に伴う新しい光機能性を議論する。特にこれらのナノ構造における励起子のサイズ効果と次元性の研究から、分子→クラスター→微結晶→バルク結晶への電子構造の変化を連続的にかつ実験的に解明し、分子の高次組織化形態である有機分子半導体ナノ量子構造の新しい光機能性を探求した。石英基板上にオリゴチオフェン膜を成長させた場合、H会合体が形成される。特に分子構造を制御することにより、結晶薄膜の構造および光学特性を制御する試みを行った。チオフェン分子の間にバリア分子となるフェニル、メチルおよびビニル基を挿入し、分子の幾何学的構造および電子構造を制御した。吸収および発光スペクトルの偏光依存性やピコ秒発光減衰曲線は、挿入した分子(分子の幾何学的構造)に大きく依存することがわかった。直線状の分子は、結晶性の良い薄膜が得られたが、折れ曲がった構造の分子は、うまく配向せずに光学異方性を示さなかった。x線回折および電子顕微鏡による構造特性と光学特性の間には、良い相関関係があることがわかった。チオフェン骨格の新しい構造を持つオリゴマー薄膜は、有機分子半導体量子ヘテロ構造のモデル物質として役立ち、新しい光物性の研究の場を与えてくれる。薄い膜では、分子構造の異方性が結晶膜の性質にも反映されるが、ある程度厚くなるとマイクロクリスタルの結晶軸の配列が乱れて、光学異方性が膜厚に依存しなくなることもわかった。
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