研究概要 |
生体膜の主要構成成分であるリン脂質と同じ極性基を有する2-メタクリロイルオキシエチルホスリルコリン(MPC)ポリマーは、天然のリン脂質に対し強い親和性を有し、血液と接触した際に優先的にリン脂質を表面に吸着する。吸着したリン脂質分子がMPCユニットと協同的に自己組織化して生体膜類似構造を形成するため極めて優れた血液適合性を示す。本研究ではモデルリン脂質として、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を用い、DPPCリポソームのリン脂質ポリマー表面への吸着状態解析することと組織化構造体構造の確認を目的とした。MPC及びその類縁体とn-ブチルメタクリレート(BMA)とのポリマーを効率よく合成することができた。このリン脂質ポリマーと比較材料としてポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)を用いた。リポソーム溶液を添加後、MPCポリマー表面では極めて短時間に平衡吸着に達していた。一方、PHEMAで断続的な低下がみられた.すなわちMPC共重合体表面には吸着しているのに対し、PHEMAにはリポソームが重合体内部に拡散しているものと考えられた。リポソームで処理したポリマー表面を原子間力顕微鏡で観察すると、PHEMAでは吸着したリポソームの扁平化が認められた。一方,リン脂質ポリマー(PMEB30)では,リポソームの球状の形態が維持されていることがわかった。これよりMPCポリマーはリポソームの構造を安定化させる効果も有すると結論できた。
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