研究概要 |
自然界には磁気超微粒子-細胞複合体として、ユニークな構造を持つ磁性細菌が存在している。磁性細菌由来の磁気超微粒子は、脂質二重膜に覆われた粒径50〜100nmのマグネタイト粒子であり、分散性に優れているといった特徴を有している。すでに、この磁気超微粒子に酵素、抗体、DNA等固定化し、機能性複合体の作製とハイブリッド化に関する研究を進めている。本研究では、磁気超微粒子-リポソーム複合体を作製し、磁気による誘導やリポソーム内容物の放出制御について検討することを目的としている。本年度は、磁気により誘導可能な抗ガン剤を封入した磁気超微粒子-リポソーム複合体の作製と培養細胞系での抗腫瘍効果の確認、生体内での磁気誘導の評価に関する実験を行った。 磁性細菌粒子及び抗癌剤CDDPを封入したマグネットリポソームを逆相蒸発法により作製し,in vitroでの抗腫瘍作用について調べた。CDDP封入マグネットリポソームをマイクロプレート中のマウス扁平上皮癌細胞(KLN205)に添加し,XTTassayにより細胞増殖率を求めて、抗腫瘍作用を評価した。その結果、100ml培養液中にCDDPが0.01、0.05、0.10mgとなるようにCDDPあるいはCDDP封入マグネットリポソームを添加した場合の72時間後の細胞増殖阻害率は、前者で3、45、61%、後者で3、48、65%とほぼ同じ値を示し、CDDP封入マグネットリポソームの抗腫瘍作用が確認された。また、in vivoでの外部磁場による薬剤の固定については、ハムスター背部皮下にCDDP溶液あるいはCDDP封入マグネットリポソームを局注、4000Gの磁石を固定して3時間後の磁石固定部位(筋膜上直径3cmの組織)、血液、腎臓中のPt残留量を原子吸光法により測定し、評価を行った。その結果、CDDP溶液と比較してCDDP封入マグネットリポソームを局注した場合に、磁石固定部位に多くのCDDPが固定されていた。
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