本研究は、有機薄膜を含む界面に関して、超構造と物性の関係を明らかにし、分子操作による超構造の制御によって、新機能の発現を図ることを目的として行ったものである。以下に、本年度の研究で得られた結果を示す。 1.ITO透明電極の各種表面処理面上の、TPD薄膜の堆積時におけるナノレベルの成膜プロセスを、AFMにより調べた。その結果、ITOとTPDの撥水的な性質が明らかになり、平坦な表面上で撥水性が強くなって核成膜モードが強く生じることがわかった。キャリア注入に関しては、核成膜が生じることなく、より非晶質の膜構造を持つことが望ましいことが判明した。 2.成膜モードに対して、障壁等のエネルギー的な構造に大差はなく、主にホッピング経路の選択性が自由になることがキャリア注入効率の増す主因であると考えられる。 3.キャリア閉じ込め可能な分子配列構造をめざし、TPD/PBD多層構造を提案し、物性評価を行った。界面はナノレベルでほぼ平坦で、非晶質的な界面配列を持つことがわかった。PL、励起PL測定より、キャリアがTPD井戸に流れ込み、閉じ込められるエネルギー構造が明らかになり、EL発光の効率がTPD単層膜よりも大きくなった。
|