生体の光合成の機作に学び、人工的な高効率光電変換系あるいは電気化学的触媒系への高エネルギー電子供給系としての超構造体を超薄膜として電極表面上に構築することが本研究の目的であった。超構造体の基本は、チオール基をもつ長鎖結合型分子の金電極上への不可逆吸着を利用することにより構成することとした。配列制御された人工的光電子移動系を自己組織的に構築するために要求される構造的ファクターを明らかにすることに特に注目した。分子レベルで吸着構造とその動的過程とを明らかにするために、主な測定手段として電位変調紫外可視反射分光を用いた。今年度の成果は以下のようである。 1.金電極上アルカンチオール自己組織膜内の酸化還元活性中心の配向をより高い近似のモデルに基づいて求める方法を開発した。それに基づいて、ビオロゲンチオール、ヘミン、ガルビノキシルアルカンジスルフィドなどの吸着分子配向を求めた。 2.共有結合で固定化することのできない光励起中心(ヘペリシン)を用いたアルカンチオール+ビオロゲンチオール混合膜修飾電極における光誘起電子移動を達成できた。 3.光電子移動のための反応場環境制御分子(ガルビノキシルアルカンジスルフィド)の配列固定化に成功し、電位変調紫外可視反射分光法によりスペクトル特性をキャラクタリゼーションした。 4.電子移動方向の自己制御能をもった光励起中心-メディエータ直結分子を設計し、合成に成功した。 5.エッジ面グラファイト電極上の吸着分子組織が電位変調紫外可視反射分光において面内異方性を示すことを初めて発見し、その解析を行い、モデルを提案した。
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