1.フラーレンと有機金属錯体による錯体形成反応の解明 フラーレン金属錯体を合成するために、その配位子となる新たな高結晶性金属フタロシアニンを合成した。フラーレンと高結晶性金属フタロシアニンによる金属錯体を単結晶形成法により試み、構造解析をX線解析により行った。 2.気水界面における錯体形成 気水界面上における錯体形成と超薄膜課を同時に成し得るために、LB法を用いた薄膜作製を試みた。フラーレンと金属フタロシアニン化合物の混合希薄溶液を水面上に展開し、得られた薄膜から錯体形成状態とその組織化について検討した。両化合物とも単独によるLB膜は作製し難いが、同混合液から得られた単分子膜は比較的容易に積層膜を作製することができた。しかし、UV-Vis観察では電荷移動相互作用は確認されなかった。 3.錯体形成が累積膜の高次構造に及ぼす影響 現状では、強い相互作用が確認されず特異的な構造変化は観測されないが、フタロシアニン化合物の中心金属種を変えるとそのπ-A曲線に変化が生じることが明らかになった。 4.超構造体の機能評価 機能評価として得られたLB膜の光導電率の測定を行った。パラジウムフタロシアニン化合物(PdPcTB/C_<60>)では可視光照射による光応答性が得られた。一方、中心金属が鉄(FePcTB/C_<60>)またはコバルト(CoPcTB/C_<60>)であるフタロシアニン化合物を用いた場合、光応答性が殆ど見られないが、その導電率はFePcTB/C_<60>が10^<-6>S/cm、CoPcTB/C_<60>が10^<-4>S/cmと高い値を示した。
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