これまでに、メタノール合成反応用Cu/ZnO粉末触媒に対して、Zn/Cu(111)がモデル触媒として妥当であることを明らかにし、また、反応機構において、Znはフォーメートを安定化する役割を果たすこと、ZnはCu原子とsurface alloyを形成することを報告してきた。本研究では、さらにフォーメート種の存在するサイト、生成過程および構造について調べた。Zn/Cu(111)表面でフォーメート生成過程をin-situ IRASにより追跡した結果、活性点(Zn)上に存在するフォーメート種の検出に成功した。すなわち、全圧760Torr、CO_2/H_2=1、353KでCu(111)でのフォーメート生成過程を調べた結果、OCO対称伸縮振動およびCH伸縮振動を確認し、フォーメートの生成が明らかとなったが、表面平行方向のOCO非対称伸縮振動ピークは現れなかった。これに対して、Zn/Cu(111)表面では、OCO非対称伸縮振動ピークが現れた。フォーメートはbidantate型と呼ばれるもので、2つの酸素が表面原子と結合しているが、この特殊なフォーメート種は、一方の酸素をCuにもう一方の酸素をZnに結合すると考えられ、そのためフォーメート分子が表面平行方向から傾きOCO非対称伸縮振動が観測されたと云える。また、反応器付のSTM装置を用いて、Cu(111)表面CO_2の水素化を常圧で行い、生成したフォーメートをSTMで観察した。その結果、個々のフォーメートが観察され、さらに規則的に配列した種々の構造を観察することに成功した。構造は被覆率によって変化し、飽和値ではp(2×1)構造の像が得られ、これは被覆率0.25に対応し、XPSの結果と一致した。また、フォーメートが、分子面を平行にして成長する様子が観察され、被覆率が小さいときには、直線的に並ぶフォーメートが観察された。
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