ppmレベル以下の極低濃度で存在するH_2Sを検知するため、低圧蒸着法によりSnO_2およびCuO-SnO_2薄膜を調整した。SnO_2薄膜は合成空気1Torrの雰囲気下で金属スズを加熱して蒸発させ、アルミナ基板上に付着させた。一方、CuO-SnO_2薄膜は、蒸発源に金属スズおよび金属銅を用い、同時に蒸発させることにより調整した。薄膜の組成は、各蒸発源に印可するヒーター電圧を調節することにより変化させた。得られた薄膜の膜構造をAFMを用いて調べたところ、SnO_2膜およびCuO-SnO_2膜は、平均粒子径がそれぞれ28および52nmの比較的大きな粒子から成っていることがわかった。膜厚は約00nmであるため、膜は粒子が数個積み重なって構成されていること、また所々に孔径40〜80nmのメソポアを有していることがわかった。 これらの蒸着膜のH_2S検知特性を調べたところ、SnO_2膜では400℃において良好な応答・回復速度が得られた。SnO_2膜は直線的な濃度-感度依存性を示し、低濃度側は0.1ppmまでのH_2Sが検知できた。CuOを微量添加したCuO-SnO_2膜では、回復速度が改善され、300〜350℃で完全な回復が得られた。Cuoの添加により感度が増大しており、10ppmH_2Sに対する感度は、300℃で320、350℃で200であった(SnO_2膜の感度は4)。このCuO-SnO_2膜により、300℃では0.02ppm、350℃では0.05ppmのH_2Sの検知が可能となった。 以上のように、低圧蒸着法により調製したCuo-SnO_2膜を用いて数十ppbの極低濃度H_2Sが検知可能であることがわかった。このような高感度の原因として膜が比較的大きな粒子から成り、しかもメソポアを有していることから、H_2Sが膜内部に拡散しやすくなったためと考えられる。
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