インジウムを骨格に持つZSM-5系メタロシリケートを水熱合成法により、調製しこれに白金、パラジウム、ロジウム及びルテニウムを0.5wt%担持した触媒を作成した。この触媒を利用してシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応を行い、活性劣化に及ぼす貴金属担持の効果について検討した。また、触媒表面上に生成した炭素状物質の物性を測定したところ、生成した炭素状物質は加熱あるいは減圧によって容易に除去できる高分子化合物であることが分かった。そして、これがコ-クにまで成長するかどうかは、触媒の強酸点の強さに依存することが分かった。さらに、貴金属で修飾した触媒に生成する炭素状物質は、修飾しない触媒よりも容易に除去された。 反応速度のプロセス時間変化から活性劣化はプロセス時間を対して、指数関数的に変化することが明らかになった。また、この勾配である活性劣化因子はメタロシリケートを貴金属で修飾すると減少したが、その減少度合いは貴金属の種類によって異なった。そして、その順序が炭化水素の完全酸化のそれと一致することあら、反応系に添加した二酸化炭素によって酸化されたと推定された。また、活性劣化因子から触媒活性が反応開始時の1/2になる時間(半減期)を求めたところ、最も劣化因子が小さかった白金担持メタロシリケートで190時間となり、現在まで知られているベックマン転位反応用触媒で最長の寿命になった。 さらに、炭素状物質は反応溶媒として用いられたメタノール蒸気で除去された。このように、触媒の改良と反応雰囲気の調節によって、活性劣化を抑制しつつベックマン転位反応を行うことができた。触媒寿命をさらに大きくするために、なお触媒の改良が必要であると考えられる。
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