分子性酸化物と一酸化窒素との反応性を探り、新しい窒素酸化物分解触媒のデザインの基礎を築く為に、一連の分子性酸化物を合成し、そのNOとの反応を検討した。NOとの反応を検討した分子性酸化物は次の四種である:[TeMo_8O_<29>(OH_2)]^<4->、[{(η^3-C_4H_7)Rh}_2(V_4O_<12>)]^<2->、[{(η^4-C_8H_<14>)Rh}_2(V_4O_<12>)]^<2->、[V_4O_<12>]^<4->。これらの分子性酸化物の溶液にNOの気体を導入して反応を試みたところ、[{(η^3-C_4H_7)Rh}_2(V_4O_<12>)]^<2->、[{(η^4-C_8H_<14>)Rh}_2(V_4O_<12>)]^<2->、[V_4O_<12>]^<4->の三種については窒素-酸素結合を含んだ新たな化合物が得られる事が明らかになった。しかし[TeMo_8O_<29>(OH_2)]^<4->溶液については、相当量のNOの吸収が見られたものの、窒素-酸素結合を含んだ新たな化合物の生成を示唆する様なデータは得られなかった。NOの代わりに、正の電荷を持ったNO^+を用いても、やはり窒素-酸素結合を含んだ新たな化合物は得られなかった。[TeMo_8O_<29>(OH_2)]^<4->には配位不飽和なモリブデン原子が含まれているのだが、この原子のNOに対する反応性はそれ程高くないと言う事になる。 また、分子性酸化物とNOとの反応を検討する過程で、有機金属基がV_4O_<12>環上を、恰もピボットするかの如く動く事、さらに有機金属の持つメチレン鎖がV_4O_<12>表面上の酸素原子とかなりの相互作用をしている事が明らかになった。
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