本研究課題では、モデル化されない環境変動に対処可能なシステムの構築を目的としている。この目的を達成するための方法として、身体系と認識系から構成されるシステムを考え、身体系において環境と相互作用を行なうことによって、コヒーレントな関係を生成し、生成された関係に基づき認識系において自身の制御ルールを自己生成していくという内的設計を提案した。具体的には、内的設計に基づくロボットを構築し、それら複数に荷物運搬を協力して行わせ、運搬途中に環境変動を与えるシミュレーションを行い、その環境適応性をみることで、内的設計の有効性を示した。このとき、制御ルールは予め規定されているが、荷重変動、ロボットの除去といった異なる環境変動に対して、個々のロボットがコヒーレントな関係を生成した場合には同一の制御ルールのもとで適応的に機能分散を行い、安定な荷物運搬を継続することを示した。また、コヒーレントな関係の生成に失敗する場合があることを示し、このことから身体系が制御ルールの妥当性を評価する働きを有しており、新たな制御ルールを生成していくための枠組みをもつことも示した。このように、本研究においては、モデル化されない環境に対処可能な工学システムを実現するために内的設計が有効である可能性が示された。
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