研究概要 |
本年度は昨年度の公募研究の結果得られた知見化に基づき,Schemeという一種の関数型言語によるプログラムの3次元視覚とそれに対する操作システムの実装を行なった. 視覚化の方式は,プログラムにおける関数呼び出し履歴をあらわす木構造を,3次元空間内の入れ子になった箱として実現した.これによって,視点の移動は箱の内部への移動となり,利用者に対してより強い臨場感を与える.さらに,Scheme言語特有の制御構造である継続(continuation)を,実行履歴の一点に対する印(旗)として視覚化することで,理解を容易にした.評価実験によれば,コルーチンの実現など継続を利用した高度なプログラムについて,理解が容易になったとの声が得られている. 実行モデルに対する操作としては,すでに実行済みの式の値を,直接操作によって他の値に変更することを可能にした.この操作によって,その時点からの計算が再実行され,変更を反映した結果を得ることができる.この操作は,対話的に,繰り返し行なうことが可能であるから,プログラムの動作の理解に非常に有効である. ただ,本研究は視覚化/操作のためのモデルの構築が主目的であるので,その提示や操作方法については十分に対応したとはいえない.実際,実行モデルに対する操作や視点移動はすべてマウスやキ-を用いて行なっている.人工現実感の観点からは,より多様な入力手段を用いることがのぞましく,本重点領域研究の他の研究成果の利用を進めていきたい.また,画像の提示についても,現状では3次元グラフィクスによる通常のCRTディスプレイへの表面であるので,より臨場感のある提示媒体を使用していきたい.
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