研究概要 |
本研究は、大きな非線形性を持つ有機材料の利点を生かしつつ、機械的なもろさを克服することのできる可能性のある有機ゾル・ゲル薄膜を用いて非線形光学効果を利用した光変調デバイスを開発することである。 そこで、本年度は、有機材料としてカロテノイド、アゾベンゼンに注目し、1.カロテノイドを用いた有機・無機ゾル・ゲルの作製、ならびにその非線形光学特性の時間分解測定、2.アゾベンゼン2分子膜の電場変調吸収測定、3.アゾベンゼン2分子膜の3次非線形感受率_χ^<(3)>の波長分散測定を行った。 ・1.テトラエトキシシラン、エタノールを用いて有機材料β,β-カロテンをドープした有機・無機ゾル・ゲルを作製し、光ヘテロダイン検出フェムト秒時間分解カー効果測定を行った。その結果、カロテノイドドープゲルがフェムト秒域で応答する大きな負の非線形性を持つこと、これらの非線形性発現のメカニズムは2光子過程によるものであることを明らかにした。 ・2.アゾベンゼンのH会合、J会合2分子膜を作製し、これらの電場変調吸収測定を行った。測定された電場変調スペクトルは、吸収スペクトルのエネルギー1階微分係数と相似な形をしており、1次のシュタルク効果によるものであることを明らかにした。 ・3.測定された電場変調吸収スペクトルとクラマ-ス・クロニヒ変換を用いた技法により、アゾベンゼン2分子膜の_χ^<(3)>の波長分散を240-500nmにおいて決定した。この結果、非共鳴域において、アゾベンゼン2分子膜は石英の10倍程度の_χ^<(3)>(H会合体:5.6×10^<-13>esu,J会合体:2.4×10^<-13>esu)を持つことが明らかとなり、高効率光変調デバイスへの応用が期待される。
|