有機非線形光学材料におけるフォトリフラクティブ効果は無機材料に比べ依り大きな屈折率変化が期待でき、これを用いた位相共役鏡の性能を向上させることが可能である。本研究では、ポリビニルカーボネート母材に非線形光学分子を加えたものを使用した。この材料の要点は、可塑剤を添加し、ガラス転移温度を下げ、非線形光学分子が比較的容易に回転できる状態に保つことにより、屈折率変化を増加できることにある。ところが、材料に流動性を与えたため、微結晶が析出しやすくなり、変質を起こしてしまうという欠点が指摘されていた。これに対する対策として、添加剤を減らし、屈折率変化量をある程度犠牲にし、材料の化学的安定性を確保するという妥協的な方法と、添加剤の種類を変え、析出を起こりにくくする方法が考えられる。われわれは、始め第1の方法により、冷所に保存するなどして十分注意深く扱えば変質を起こさず、大きなフォトリフラクティブ効果の得られる条件を見付けた。ただしこれは問題の本質的な解決とは言えない。われわれはその後、有機材料の専門家の援助を得て、微結晶の析出を起こさない可塑剤を見付け、その材料においてフォトリフラクティブ特性を測定した。その結果、屈折率変化の大きさなどフォトリフラクティブ特性において、これまでの有機材料と比べ遜色ない有機非線形光学材料を開発することができた。現在、この材料についてフォトリフラクティブ特性を詳細に測定しているところである。
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