研究概要 |
正孔輸送性を持つテトラフェニルジアミノビフェニル(TPD)を側鎖に持つスチレン型およびアクリレート型のモノマーを合成し、単独およびアクリル酸ブチルとの共重合体をラジカル重合により合成した。いずれの場合でも収率40%以上で数平均分子量が2万以上のポリマーが得られた。単独重合体は脆く、薄膜を作成できなかったが、アクリル酸ブチルが50モル%以上の共重合体は薄膜の形成が可能であった。全てのポリマーはAg/AgCl電極に対し0.85及び0.95Vに2つの酸化電位を持っていた。この値は低分子量のTPDとほぼ同じ酸化電位であり、高分子の側鎖にTPDを導入しても酸化電位に大きな変化がないことが分かった。TPD単位を65重量%含むポリマーは10^<-5>〜10^<-4>cm^2/V・sの移動度を有し、TDP単位の減少とともに移動度は低下した。 TPD単位を65重量%含むアクリレート型共重合体に非線型光学色素としてN,N-ジエチルアミノニトロスチレン(DEANST)を15重量%、電荷発生剤としてフラーレンを0.2重量%加え、フォトリフラクティブ(PR)素子を作成した。この素子について2光波結合法によりPR効果を調べた。結合利得は電界強度50V/μmのとき9cm^<-1>、電界強度70V/μmのとき40cm^<-1>であった。また、格子形成速度は非常に速く、1ms程度で光のエネルギー移動が起こっていることが分かった。 電子輸送性ポリマーを用いた素子についてPR素子が出来るかを検討した。電子輸送性ポリマーとして、チオキサンセンジオキシド誘導体を含むポリマーを合成した。このポリマーは、10^<-6>〜10^<-5>cm^2/V・sの移動度を有していた。このポリマーにDEASTを加えると、電荷移動錯体を形成し、これが電荷発生剤として働くことが分かった。また、この材料を用いたPR素子もPR効果を有することが明らかになった。
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