本研究の目的は、主鎖型液晶性高分子の高い二次非線形光学効果(SHG)の発現機構を解明しつつ、得られた知見に基づいてより効率的な高分子非線形光学材料を開発し、より効果的な光非線形素子を開発することにある。我々の取り扱っているサーモトロピック主鎖型液晶性高分子は、ヒドロキシ安息香酸(PHBと略記)と2-6ナフトエ酸(HNAと略記)の共重合ポリエステルであり、高い液晶性を与える組成比のものを分子鎖が高配向するようフィルム状に加工すると、高いSHGを発現することを見出している。液晶状態からの機械的配向と同時に電場配向効果を利用する装置を試作し、電界印加延伸配向製膜法により配向フィルムを得た。この方法によると、延伸のみの製膜のものより数倍非線形光学定数の大きいフィルム試料が得られることが明らかとなったが、同時に再現性にやや問題があることも判明した。8年度は温度をより精密にコントロールすることにより、より再現性良く非線形光学定数の大きいフィルムを得られるよう改善を施した。しかしながら、この方法では得られるフィルムの効率に限度がある(d_<33>≒25pm/V)ことも判明した(超高速延伸でないとドメインが発生するため)。一方、この研究過程で、直流電場印可のみによっても、上記程度の効率を持つものが得られることが判明した。そこで、液晶状態の試料に水平方向に電場を印加するセルを作成し、電場印加中の試料のSHGを測定するようにして、温度と電場強度の最適条件を求めた。この知見を利用することにより、分子の分極方向の揃った、より高効率な非線形光学特性を有するフィルムを得ることに成功した。今後は光変調デバイス等へ応用を検討する。
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