有機分子性非線形光学結晶は高機能な光学特性を有する反面、機械加工を施しにくいという欠点があり、デバイス化を進める上で大きな障害となっている。このため新開発のXeおよびArエキシマランプを用いて、光エッチング技術の開発を行った。 試料としては、半有機結晶:LAP、LHBF(L-histidine tetrafluoroborate)結晶、および、有機結晶:MNA、m-NA、MBANP、MNBA、ABP、DAN結晶を用いた。雰囲気ガス種を変えて試料を照射した。Xeエキシマランプの光子エネルギー7.2eV、Arエキシマランプでは9.8eVであり、有機物のほとんどの結合エネルギーを上回っているので、効率よく分解・除去出来る。 LAP、LHBFのα面に金属マスクをおき、エッチングを行った。LAPでは、エッチング後の経時変化がみられた。蒸発しにくく吸湿性があるリン酸成分が表面に残留し、空気中の水分ととに凝集していくためである。LHBFは、無機部分の蒸気圧が高いために凝集は起らなかった。Arエキシマランプの場合にも生じないことがわかった。 MNA、m-NA、MBANP、MNBA、ABP、DAN結晶の劈開面に金属のメッシュ状のマスクをかけて同様にエッチング行った。172nm光でも、126nm光でもMBAMPでは照射された部分が非常に平坦であった。それ以外の結晶は内部構造を反映したすじ状のパターンが観察された。エキシマランプによるエッチングは光子が結合を直接切断する量子過程と、活性化された雰囲気ガスの介在する化学反応過程が混在している。Arエキシマランプの光子エネルギーは、これらの結晶のほとんどの化学結合よりもはるかに高いので、このすじ状パターンは光子が直接作用しているのではなく化学反応的過程であると思われる。雰囲気ガス種、圧力等の条件を整え、量子的過程を有効に用いればよりスムーズなエッチング面を得ることが出来る。
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