研究概要 |
ハイパー核の弱崩壊には,中間子放出を伴うものと中間子放出を伴わないもの(非中間子的弱崩壊とよぶ)がある.本研究は,後者をあつかい,その理論的理解を試みたものである.非中間子弱崩壊では,核内の中性子,陽子が放出されるが,その分岐比がこれまで理論的に説明できず,その機構が議論されて来た.ここでは,従来考えられてきた2体機構にくわえ,3体機構を導入することによって,実験値とのずれがかなり改善されることを明らかにした.その際,放出陽子の運動エネルギー分布(スペクトル)が非常に重要な意味を持つが,その点は,従来,あまり議論されて来なかった.また,非相対論的な扱いの不十分さを明確にし,相対論的な枠組のなかで扱うことの重要性をあきらかにした. 一方,本研究では十分には扱えなかった点もある.3体機構については,その代表的なもののみに絞って議論している.また,素過程としての弱崩壊もπ中間子以外が関与する崩壊も理論的には存在できる.放出陽子が残留核と相互作用する終状態相互作用の効果(s殻ハイパー核の場合には小さいが)も議論すべきであろう.これらの寄与も取り込んだ,より包括的な研究が現在すすめられている.
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