1.ハイパートリトンの弱崩壊 この弱崩壊過程の解析には3つの部分-即ち、(a)始状態のハイパートリトンの束縛状態、(b)Λ-核子間の弱相互作用、(c)さらに終状態の3核子系連続状態-各々の研究が必要である。(a)は宮川(研究代表者)(b)はBarcelona、Washingtonのグループ、(c)はKrakow、Bochumのグループが中心になって行なった。現実的なハイパートリトン波動関数および正確な3核子連続状態を使った初めての計算である。その結果、終状態相互作用の効果は非常に大きく無視できないことが解った。また、Λが中性子と弱相互作用して崩壊する過程(n-induced decay)および陽子と相互作用して崩壊する過程(p-indeced decay)はこれまで実験的に識別でき、相互作用の性質の重要な情報源の一つと考えられてきたが、この系では両者は区別不可能であることが実際の数値計算で明らかになった。 2.ΛΛΝ-ΞΝΝ結合系の反対称化 strangeness=-2のこの系はΛ-Λ相互作用の知見をうるためには重要な系である。しかし、その正確な定式化は容易ではない。今回、筆者らは、第2量子化の手法およびMulti Three-Cluster Coupling model の考え方を用いて、Faddeev方程式に相当する反対称化された結合方程式を導いた。 3.ΛΝ-ΣΝ結合系t行列の特異点の位置の確定 ΛΝΝ-ΣΝΝ結合系の連続状態を調べる上で、ΛΝ-ΣΝ部分系のt行列の振る舞いを知ることは決定的に重要である。技術的には、運動量の複素平面上に解析接続する必要があるため注意を要する。今回、Nijmegen Soft core potentialによるoff-shell t行列を調べ、ΛΝ thresholdおよびΣΝ threshold双方の近傍に(非物理領域ではあるが、物理領域からそれほど遠くない位置に)、特異点が存在することを確認した。
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