研究概要 |
平成8年度に世界最高水準の性能を持つフライブルグ大学のメタルクラスターイオン源、JEOL社の高性能質量分析器を導入し、それぞれ所期の性能が発揮できることを確認した。平成9年度には、メタル・クラスターイオン源の改良を行い、世界で初めてクラスターサイズn=10〜10000までコントロール可能とすることに成功し、その成果を元に「クラスター国際会議」を筑波大学で主催し、海外70名、国内80名の参加者を得て、活発な議論が交わされた(AIP Conference Proceeding 416(Tsukuba,Japan1997);"Similarities and Differences between Atomic Nuclei and Clusters.")。 そして平成10年度には、それらにリフレクトロンTOF型質量分析器を加え、全装置を連結稼働させ、所期の性能を確認したのち、クラスタービームを取り出すことに成功した。この成果はクラスター国際会議(ISSPIC9,Lausanne,Switzerland,1998)にて発表され、クラスターのサイズコントロールによる様々な可能性を示唆し、国際的な評価を得た。この基礎実験データを元に、その後、クライストロンアンプを用いて多価イオンを作り、ビーム交差法によるクラスターの多価イオンを形成して、クラスター分裂の研究を本格的に遂行し、二つの重要な成果が得られた。 一つは半導体クラスター崩壊に関する測定結果であり、クラスター生成時の温度を4370Kとすることにより、クラスター物理に定性的な説明を与えることに成功した。もう一方では、遷移金属クラスターの質量分布を測定し、クラスターのサイズがその物質の凝集エネルギーと深い関係があること、クラスターサイズとその収率にはスケーリング則が成り立つことを明らかにした。これにより、原子だけでなく小さいクラスターが激しく動き回ることによりクラスターが形成されていくというモデルを示すことができた。
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