研究概要 |
他自由度系のトンネル現象には,結晶の転位の運動や固体ヘリウムの結晶成長のように,粒子的描像よりも線状構造の運動過程と捉えられる現象がある.そのような系の量子トンネル運動を調べることが,この研究の目的である.転位のトンネル運動を研究するグループ(鈴木,竹内,小泉)では,液体3Heを用いて1K以下で固体の塑性変形実験を行うための極低温変形装置を導入した.この装置を用いてbcc金属の一つであるNbとTaの塑性の実験を開始した.降伏応力の温度依存性,歪速度依存性,さらにTaでは超伝導-常伝導遷移にともなう変形応力の変化を測定し,Petukhovらの理論と比較し解析を行っている. 固体ヘリウムの表面ステップを研究するグループ(水崎,上羽)は,以下のような実績をあげた. 1) 単結晶,単磁区核整列固体3Heの超音波実験;種結晶を細長い試料室の中で成長させると,単磁区構造をもつ単結晶固体3Heが出来る.超低温でも音速は温度変化し,核スピンの寄与を始めて見出した.解析より核スピン相互作用のグルナイゼン定数を決定した. 2) 超低温に適応可能な磁気映像法の開発;超低温での結晶成長の研究に適用可能な磁気共鳴映像法(MRI)の技術を開発した.予備実験として希釈冷凍機で得られる数10mK温度域での3He-4He混合液の相分離界面の形状を映像化し,2次元画像の空間分解能は数10μmを達成した.混合液の磁化の空間的な回復を可視化し,試料壁から磁化の回復がはじまり,後は試料全体にスピン拡散で広がる様子を観測することに成功した. 3) 固相成長における表面ステップのダイナミクス,特に原子ステップの不安定化等の問題を理論的に研究した.
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