研究概要 |
従来の研究では、トンネル反応の機構について殆ど検討されていなかった。本研究では、極低温固体水素中のトンネル反応を研究し、その制御因子を解明することに成功した。次に、固体炭化水素中において、トンネル反応を利用して高選択的反応を実現した。さらに、γ線照射細胞中で、ビタミンCと長寿命ラジカルのトンネル反応がガン抑制作用に関連していることを明らかにした。 部分重水素化シクロヘキサンカチオンラジカルのESRスペクトルが相異なるゼロ点振動エネルギーをもつC2h構造間でトンネル変位により動的平均化を受けることを見出した。さらに、低温アルゴン中に生成,単離された選択的重水素置換メチルラジカルの核スピン-回転状態結合に関する量子効果を解明できた。 超球楕円座標という新しい座標系を導入し、水素原子移行反応の動力学を解明した。ポテンシャルエネルギー超曲面からリッジを抽出し、反応過程をリッジ近傍における振動非断熱遷移として概念化することに成功した。外場特にレーザー場を旨く操作することによって分子過程を制御する新しい理論を提唱し応用研究を進めている。断熱追随法やπ-パルス法を包含する一般的手法でその有効性を示した。 最も重い水素の同位体であるトリチウム(T)のトンネル反応を、原子炉からの中性子捕獲反応、^3He(n,p)T、を利用して検討し、水素同位体分子との引抜反応がトンネル過程により進むことを実証した。また反応が液体ヘリウムという代表的な量子媒体中で起こることを利用し、^3He(n,P)Tにより生成するT,p(H)間の再結合反応へのバブル原子の関与を示唆した。これらの研究用、原子炉用低温化学実験装置を製作した。
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