人間活動に起因した大気CO_2濃度の増加は、地球温暖化問題として人類が今日直面している、緊急に解決すべき重要課題である。そのためには、信頼できる大気CO_2収支の把握は不可欠である。ところが、海洋に溶存する無機炭素の安定同位体測定結果の解析から、海洋による大気CO_2の吸収量が、気候変動に関する政府間パネル(1995)による見積りの2分の1程度であることを見いだした。 そこで、大気CO_2の吸収源としての植生の役割を見直すため、また人口増大や人間活動の拡大に伴う土地利用に起因した、植生域や植生の光合成生産活動の変化による大気CO_2濃度の変動を評価するため、衛星測定による植生域の変化や植生の光合成生産活動の変化を、植生に関する有力な情報を与える大気CO_2のδ^<13>Cとも関連づけることにより、大気CO_2濃度の変動の実態を解明した。 エルニーニョ現象に伴う、大気CO_2の1ppmにも及ぶ濃度変動と、-0.07‰にも及ぶδ^3C値の活動は既知のことである。そこで、NDVI衛星データを処理して地球規模の植生の光合成生産活動の変化を明らかにした。その結果、熱帯雨林の光合成生産量の変動に起因した、熱帯雨林のCO_2固定による大気CO_2濃度変動が1ppmにも及び、そのδ^<13>C変動が-0.01‰にも及ぶことを見いだした。
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