本研究は、アジア-アフリカ大乾燥地域の陸面状態に及ぼす気候変動(自然的要因)と人間活動(人為的要因)の役割、さらに、様々な要因による陸面状態の変化が気候に及ぼす影響を解明することを目的とした。平成8年度は、アジア-アフリカ大乾燥地域のなかの北アフリカ、サヘル地域を解析対象として、ここの大気・陸面相互作用の実態を衛星・地上観測データをあわせて検討した。 西サヘルにおいて、植生指標の平年からの偏差の持続性とその偏差が大気に及ぼす影響について調べた。平均的な季節変化からの偏差についての自己相関解析によると、大気と比べると、植生指標は大規模な海面水温に匹敵するほどの高い持続性をもつ。季節的にみると、植生指標の偏差は半乾燥地域特有の短い雨季(6-9月)において降雨の多寡によって形成され、雨季終了後長い乾季に高い持続性が保たれるが、翌年2-4月にとぎれる傾向にある。 しかし、1987/88年1988/89年の乾季においては、それぞれ前年の雨季に形成された植生指標の偏差が翌雨季までとぎれずに継続していることが注目される。このとき、850-700hPa(混合層)の気温は植生の少ない(多い)ときには高温(低温)となる傾向が認められた。このように、植生あるいは土壌水分がある雨季から翌雨季へと降雨の偏差を伝える媒体の役割を果たす可能性が示唆された。
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